ことの葉
◎ 人生はひまつぶしでできている ◎
2026年4月8日
電車の中をぐるり見渡す。
人々はうつむき
携帯の画面をなぞる。
「携帯はよくない」と言う人も
きっと携帯を眺めている。
少し前は、それが、
「テレビ」で「新聞」で、
ある時代には「たまごっち」だった。
ツールは変われど、
人はいつだって「暇」を埋めるものがいる。
人は「休暇」をとりたがるが
何もすることがない時間には耐えられない。
座禅や瞑想、たった三分ですら、
體を動かさず、何も考えない、は難しい。
私は子供時代に夏休みをうまく過ごせたことがない。
だらだらぐずぐずし、達成感も充実感もなかった。
子どもながらに「人生はもっと長い夏休み」だと思った。
そして子供時代の夏休みに感じた気持ちになるのはもういやだから
「いい暇つぶしのアイテム」を持たないといけないと思った。
気晴らしではない、”いい暇つぶし”。
豊かで忙しい私たちは、
だけど不思議なほど、真逆のことをしている。
家庭菜園できゅうりを育てるより、
スーパーで買うほうが安いという理由で、
収穫のよろこびを手放す。
上手にできないだけで、
庭づくりをプロにまかせ、
ガーデニングの楽しさを手放す。
趣味はお金がかかるからと、
はじめから諦めてしまう。
本当はいい暇つぶしのアイテムなのに、
お金を払って、手放してしまっている。
そうして、
「何もすることがない」と嘆き
今日も携帯をスクロール。
だれかの頑張る姿をみて、自分が頑張った空虚な錯覚に溺れる。
私の作品に、立体化した文字彫刻がある。
ひとつずつ手で生み出している。
「3Dプリンターで作れば?」
「量産コピーしたら儲かるのに?」
とよく言われる。
でも、思うのです。
「手からものを創る喜び」
「うまくいかないときの工夫」
「失敗して考えつづける時間」
「できたときのうれしさ」
を効率と引き換えに手放すのは、きっと違う。
人生が空洞になる。
人生で一番長い時間を費やすものは、
”最強の暇つぶしのアイテム”のままがいい。
いい暇つぶしは、
人生の醍醐味を最大に感じられる。
そう信じている。
紫舟 拝
