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絵

書画

日本には古来より、絵と文字がひとつの画面に共存し、響き合う「書画」の伝統がある。

その傑作のひとつが、江戸時代の「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」(書:本阿弥光悦/絵:俵屋宗達)である。流れるように配置された筆文字を目で追うと、その動きは鶴が飛び立つ姿と重なり、画面全体に躍動が生まれる。こうした文字と絵が一体となる日本の伝統的な表現は、日本が誇るマンガ文化にも影響を与えている。紫舟は、文字が絵の一部として調和することで生まれる視覚的な効果と、そこに宿る言葉の力に着目した。作品の中で絵と呼応するように配された書は、言葉の意味を伝えると同時に、世界一美しい日本語の造形美によって、作品に新たな物語を紡ぐ。文字は絵の一部となり、絵はことばを語りはじめる。

浮世絵

自然界に輪郭線は存在しない。しかし日本美術では、最も古い文化のひとつである「書」と共通する筆の線によって、人の姿や自然の形を捉えてきた。西洋絵画が「面」によって絵を描くのに対し、日本美術は「線」を引くことによって形を描いてきた。その象徴ともいえるのが、浮世絵の顔や姿を縁取る特徴的な黒の輪郭線である。ピカソやゴッホなどの西洋絵画にも影響を与えた線の美を、紫舟は独自の視点で再解釈する。かつて立体の空間を、線で平面に写し取った浮世絵を、 平面から解放する。 輪郭線を浮世絵からすべて抜き去り、代わりに紫舟が新たに筆を走らせた墨蹟は、立体彫刻の輪郭線となり、自由放埓に宙を舞う。 ある一点の視点から眺めると、絵と立体の輪郭線が重なり合い一枚の浮世絵が現れる。しかし違う角度に視点を移せば、輪郭線と絵の色彩がずれ、浮世絵版画の「版ずれ」を思わせる表情が生まれる。鑑賞者の動きによって、平面と立体、版ずれを行き来する作品。かつて浮世絵が立体を平面に写し取ったように、紫舟はその輪郭線を再び三次元の世界へと解き放つ。

名車

不朽の名車が持つ造形美を、書家の墨蹟によって再構築したシリーズ。ルネサンス期に用いられた黄金背景の技法を取り入れ、幾重にも層を重ねた画面に、名車の重厚な存在感と、風を切る疾走感を描き出す。緩急自在の筆さばきが、西洋の流麗なフォルムに新たな息吹を与え、今にも走り出すかのような躍動を生み出す。無機質な機械の造形美と有機的な書の生命力が融合する。

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